「はじめまして」


王子として接するか、ディオとして接するか。

判断に迷う必要はなかった。

彼の方からはじめましてと言ってくれたのだから。


「悪かったなあ。

ダナには逃げることに専念しろ、と言っといたんだが。

怖かったろ?」

「……怖かったと言えば、怖かったけど」

「ま、あいつは叱っておいたから。

とにかくこうしてここに無事についてくれてよかった、ってことだ」


彼はテーブルの上におかれていた瓶から
中身を二つのグラスに注ぐと、一つをディオに手渡した。


「とりあえず飲もうか」

「いただきます」

「不安だろうから、
先に話しておく」


グラスから一口飲んで、
ビクトールは話し始めた。


「あんたの正体を知っているのは、この中では俺だけだ。

サラもあんたと顔を合わせた事があるが、
あいつは今別の任務についているからな。

だからここでは、
ディオ・ヴィレッタとして扱わせてもらう」


ビクトールは続けた。