見回した部屋の中は、
ルッツの部屋よりは多少広かった。

違いはそれだけで、ルッツの部屋同様、
そこに快適さはまるでなかった。

部屋のはじにベッド、
テーブルが一つ、
それに向かうようにおかれた椅子が二つ。

それに小さな本棚が一つ。

部屋の中にあるのはそれだけだった。

壁には大きな地図がかけられている。


「はじめまして、だよな」


椅子に腰かけたまま、
人の良さそうな笑みを浮かべたのがビクトールだった。

二十代後半から四十代、
どの年齢と言われても信じてしまいそうだが、
その物腰からして四十代の方が近そうだ。

体格はよく、
数百人にも及ぶ傭兵団を率いる団長としての自信が、
その場にいるだけで伝わってくる。

美男子とは言いがたいが、
妙に女性を引きつける引力のようなものは持ち合わせているらしい。

女性たちが彼の気を引こうと、周りを取り囲んでいるのを
何度も見たことがある。