ビクトールとは、
宮廷で何度か顔を会わせたことがある。

あの時はいい人間のように見えていたのだが……。

イヤだと言うわけにもいかず、ルッツに続いて部屋を出る。

改めて見るとメレディアーナ号にくらべて、
フォルーシャ号の廊下は、
かなり狭い。

あちらは、
優雅にふくらませたドレスをまとった女性が歩くということもあり、
廊下の幅も広めにとられている。

こちらは二人すれ違うのがやっと、
というだけの広さしかない。

長い廊下を通り抜ける間、
誰にも会わなかった。

他のドアより、
ほんの少しだけ立派なドアの前にたどり着く。

ルッツはドアをノックした。


「鍵はかかってねーぞ」


中から聞き覚えのある声が返ってくる。

宮廷で何度も聞いたことのある声。


「ビクトール様、
ディオ君連れてきました。
俺はこれで」


部屋にディオを押し込んで、
ルッツはさっさと退室した。