「あるある。おおありだよ」


旅券がなければ、船に乗ることができない。

貸し切りという手もあるかもしれないが、目立ちすぎる。


「ねえ、その中身って大金なの?」

「大金って……ものすごい大金だけど」

「あたし、お金って使ったことないからよくわからなくて。ディオは?」

「お金使ったことないって、どういう生活してるんだよ」


ディオは頭を抱え込みたくなった。

別れ際にビクトールが世間知らずと言っていたような気もするが、

まさか貨幣の価値も知らないとは。


「しょうがないでしょ。

クーフにいる間は、お金なんて必要ないし。

あたし、地上にいたの入院してた二年間だけだもん」


開き直った様子で肩をすくめ、ダナは携帯食料をリュックサックに放り込んだ。