目を覚ました時には、ダナはもう起きていた。

昨晩のことなどすっかり忘れた顔で、荷物をまとめ始めている。

そう言えば、ディオの方の話はまったくしないまま終わってしまったのだが、

そこを追求してくる気配もなかった。


「ダナ、現金とか旅券とかって持ってる?」


差し出された携帯食料は辞退しておいて、ディオはたずねた。
二食続けて食べるのには、あまりにも微妙な味だ。


「現金は、ビクトール様が持たせてくれたけれど」


投げてよこされた小袋の中に入っていたのは、

ざっと見積もってディオの所持金全ての三倍ほどに該当する札束だった。

具体的に言えば、平均的な庶民なら数ヶ月は暮らせそうなほどの金額だ。


「旅券なんて持ってない。不都合ある?」