◆Side:彗
「祠稀、遅くない?」
ソファーに座る凪が、壁にかかる時計を見上げて言った。
大雅と遊志先輩が帰ってからというもの、凪はそわそわと落ち着かない。
きっと祠稀に聞こうとしているんだろう。俺に頼らず、俺に甘えてはいけないと、そう思ってる。
そんなこと、俺がさせないけど。
「彗……、出かけるの?」
ダイニングの椅子に掛けてあったジャケットを羽織ると、有須に見つめられる。凪は不思議そうに、俺を見ていた。
「ちょっとコンビニ。もし祠稀に会ったら、連れて帰ってくるよ」
嘘を先に言って、本当のことをついでに言った。
「てか、もう電話しようよ! 11時だよ!?」
「じゃあ俺がかけるよ。繋がったらメールするね」
そう凪に告げて、「気をつけてね」というふたりの声を背に家を出た。



