「な、凪!? 何してるの!?」
有須が自分の両頬を手で押さえて、目を見開いている。あたしは短く息を吐いて、今度こそ自然に笑った。
「喝入れたの!」
「喝って、アカンで凪! 俺を殴ればええやん!」
「ドMか」
「そういうんとちゃうやろ、大雅のアホ!」
遊志と大雅のかけ合いで、重かった空気が緩やかに和んでいく。
あたしは両頬の痛みで、胸に広がる痛みをごまかしていた。
いつまでも、彗に甘えていられない。
大雅が話してくれたことは、本当なのか、そうじゃないのか分からないけど。本当かどうか調べる術すら、ないけれど。
祠稀が闇夜の威光のリーダーであることは、本当だと思う。
どうして? なんで?
あたしの知りたいという欲は、抑えきれそうにない。
祠稀が帰ってきたら、聞いてみよう。はぐらかされても、知らないふりをされても。
あたしは何度でも聞こうと、決心していた。
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