「!」
突然目の前を横切った腕にハッとすると、彗が沸騰したココアを火からおろしていた。
「……あ、ごめん」
「うん」
その時、やっと彗と目が合った。
眉を下げて慰めるようにあたしを見下ろす、色素の薄い瞳。
「危うく焦げるとこだったね」
へつらうように笑うと、彗は口の端だけ上げて、ココアをあたしと有須のマグカップに注ぐ。その姿に、後悔した。
むりやり笑っても、彗が気付かないわけないのに。
「……ごめん」
彗はマグカップをトレーに置いてから、謝ったあたしをそっと瞳に映す。
「どうして?」
「……」
首を傾げてあたしを見つめる彗は、どれだけ優しいんだろう。
一瞬だけ頬を撫でられ、リビングに向かう彗の背中を見ながら、泣きそうになった。
結局あたしはぼんやりしていただけで、ろくに飲み物を淹れられてない。
―――バチンッ!
突然リビングに響いた音に、彗たち4人が驚く。



