僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



マグカップのぶつかり合う音がやけに大きく響くのは、誰も話していなかったから。


体中に纏わりつく視線を気にしながら、あたしは黙々とそれぞれの飲み物を淹れる。


「手伝う」


顔を上げると、あたしの目ではなく、マグカップに視線を落とした彗がいた。


ぎゅうっと胸が苦しくなって、黙って横にずれると、彗は3人分の珈琲を淹れ始めた。


あたしは作り置きしていたココアを手鍋に注いで、火にかける。それをぼんやりと眺めながら、考えていることはひとつ。



あたしが知ってる祠稀なんて、ほんの一部でしかないということ。


分かっていたはずなのに。なんだろう。この、悲しさは。


全てを知るなんて、できっこないのに。それでも知りたいと思ってしまう。相手の全てを知りたいと、望んでしまう。


その渇望がいつも、いつも、あたしを支配してる。知って、どうするというわけではないのに。


ただ、知りたい。


あたしが知らなかったことを知った時。それが、あたしにとって悲しく、残酷であった時。


どん底に突き落とされるんじゃないかって、怖くて怖くてたまらない。


こんな気持ち、誰にも分からないだろうけど。