僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「夜の街で出しゃばると、集団リンチっていうの? やるみたいだし。……店とか人とか関係なく、気に入らないもんは潰すのが主義らしくて。金出せば……人も、殺せるみたいだよ」


まるで他人事のように。いや、他人事だから口にできるんだろう。


あたしは気付いていた。祠稀に聞いたところで、話してくれるはずがないんだ。


自分が統率するグループを危ぶめるような、不利な状況を自ら作るわけがないんだから。


祠稀は誰も、信用なんかしてない。


「……分かった」


膝の上で握っていた両手に視線を落として言うと、絡み付く視線を払うように顔を上げた。


「話してくれてありがとう」


ちゃんと笑えたかな。

多分、笑えたはず。

彗の視線が妙に痛いけど、大丈夫。


あたしは足元に置いてあったトレーを拾い上げ、テーブルに置かれた人数分のマグカップをそれに置いた。


「冷めちゃったね。淹れ直してくるよ」


誰に向けたのか分からない笑みを浮かべて立ち上がり、キッチンに足を運んだ。