「夜の街で出しゃばると、集団リンチっていうの? やるみたいだし。……店とか人とか関係なく、気に入らないもんは潰すのが主義らしくて。金出せば……人も、殺せるみたいだよ」
まるで他人事のように。いや、他人事だから口にできるんだろう。
あたしは気付いていた。祠稀に聞いたところで、話してくれるはずがないんだ。
自分が統率するグループを危ぶめるような、不利な状況を自ら作るわけがないんだから。
祠稀は誰も、信用なんかしてない。
「……分かった」
膝の上で握っていた両手に視線を落として言うと、絡み付く視線を払うように顔を上げた。
「話してくれてありがとう」
ちゃんと笑えたかな。
多分、笑えたはず。
彗の視線が妙に痛いけど、大丈夫。
あたしは足元に置いてあったトレーを拾い上げ、テーブルに置かれた人数分のマグカップをそれに置いた。
「冷めちゃったね。淹れ直してくるよ」
誰に向けたのか分からない笑みを浮かべて立ち上がり、キッチンに足を運んだ。



