「何もらったの? さっきの子たち、2年生だよね」


彗に聞きながら、その手に持たれた物を見てすぐに分かってしまった。


「何それ、クッキーじゃん」


同じく気付いた祠稀が言うと、彗は頷くだけ。


透明にピンクやオレンジの水玉が印刷された袋から覗くのは、丸く切りぬかれたクッキー。


「……調理実習で作ったから、食べてくださいって」

「なんで彗には手渡して、俺には誰もよこさねぇんだ」

「祠稀は怖いから、誰も近付きたくないんじゃないかな?」


有須の容赦ない言葉に吹き出すと、祠稀が眉を吊り上げる。


「もう1回言ってみろコラ。何もできず教室から盗み見てたのはどこの…」

「きゃー!! 祠稀のバカ! 見てたの!?」

「あたしも見てた」

「凪まで!? え、ま、待って、やめて!」


何も言ってないのに顔を赤くする有須に笑っていると、彗だけが意味が分からないと首を捻っていた。


それでも、何の話?と聞かないのは相変わらずだ。


もらったクッキーを鞄にしまう彗は、「あ」と呟いてあたしに視線を向ける。


「宙の写メ、きた?」

「寝顔のやつでしょ? きたよ。超かわいい」

「あれ見て、眠くなった」


なんで。と思いながらも笑ってると、突然肩を掴まれて仰け反る形になった。


力の強さから祠稀だとわかって後方を睨むと、不機嫌丸出しで、もうなんて言うか疲れる。


「ハイハイ。帰ります、帰ろう」


やれやれ、と階段へ歩き出すと、隣に並んだ祠稀が溜め息を吐いた。それはもう、お前なぁ……と説教でも始めそうな勢いで。


「いい加減、どうにかしろよ」

「そんなことあたしに言われても、ふたりの問題じゃん……!」


小さい声で祠稀に言ってから、そろって後ろを見ると、彗の携帯を有須が覗きながら、ふたりで笑い合ってる。


どう見てもカップルっぽい彗と有須から視線を外し、あたしは祠稀と早足で下駄箱へ向かった。