「あたし、ずっと嘘ついてた。行きたい高校なんてなかったし、自立したいなんて思ったこともなかった。ただ、この家から……早く出ていきたくて」
「……うん」
知ってたと言うような口ぶりで、サヤは眉を下げて微笑む。
「マンションを出て、彗たちと同居するようになってから……割とすぐ、生理がこなくなって。夏前に、病院に行ったの」
問診、ホルモン検査、超音波による子宮卵巣の検査。MRI、下垂体腫瘍、LH、FHS。聞いたことのない単語、言われても分からない数値。
怖かった。医者ですら、怖かった。
「きっと、早発性卵巣機能不全だろうって……」
「……病院には、それきり?」
ごめんなさいとサヤに謝ったって仕方ないから、小さく頷く。
今度、親御さんと一緒に来てくれとか言われそうで。あたしは耳を塞いで、目を閉じて、逃げた。それがどれほど自分を追い詰めていくか、薄々分かっていたのに。
「……梅雨が明けた頃からのこと?」
「……うん」
サヤが緑夏ちゃんと結婚した頃だ。だからあたしは余計に、自分の体から目を背けた。
もうこれ以上、つらい思いなどしたくなくて。彗にだけ告げて、束縛して。祠稀や有須を含めて、4人でいることに執着したんだ。
「……あたしはずっと、自分の居場所がなくなることが怖くて。サヤと緑夏ちゃんが結婚したら、ふたりの間に子供が産まれたら……あたしは本当に、いらない人間だと思ったの」
ひどい言葉。サヤを悲しませる、愚かな言葉。だけど本当にそう思っていた。
あの頃、緑夏ちゃんと付き合ってると言われて、幸せになってと伝えたあたしに、サヤは凪も一緒だと言ってくれたのに。
俺たちだけの話じゃないんだと、言ってくれたのに。
今まで彼女を作らなかったのは、あたしが邪魔だったからだと思ってたって。そう言ったら、サヤは大声で否定してくれたね。
どうしてあの時、あたしは信じなかったんだろう。ただ受け流して、いい娘を演じることしか頭になかったんだろう。



