「……俺の大切な娘を好いてくれて、ありがとう」
「……」
それが、颯輔さんの答え。
やっぱり変わらない、凪への返事。
……分かってたことだ。最初から、希望などなかった。だから彗はどうにかしたいともがいていたし、凪は想いを消すのに必死だった。
けれどそれだけじゃ、苦しい。
我慢して、我慢して、そのたび湧きあがる苦しみやつらさは溜まっていく一方で。
それを聞いてやれる存在が、ふたりには必要だった。他の誰にも代わりなんてできない、颯輔さんの存在が何より必要だった。
彗は凪も颯輔さんも大事だから、見守ることしかできなくて。
凪はいい娘でいたいから、気持ちをごまかすしかできなくて。
颯輔さんは父親でありたいから、見て見ぬふりをするしかなかった。
みんな、バラバラに見えるけど。自分のことしか考えてないように思えるけど。
けっきょくは全員、“家族”を守ろうとしてるだけじゃねぇか。
自分ひとりの行動が、大切なものを壊してしまうんじゃないかと、恐れてるだけだ。
……だったら、全員で考えればいい。向き合えばいい。ぶつかり合えばいい。
「ここと、ここは、解決だよな」
彗と颯輔さんを左右交互に指差しながら、真向かいに座る早坂に尋ねる。
突然のことに早坂は目を見張るし、彗も有須も不思議そうな顔をするし、頭を下げていた颯輔さんですら俺を見た。
「……まあ、意思の疎通ってことなら、そうじゃない?」
「だよな。彗と凪は……今は微妙なとこだけど、大丈夫だろ」
彗は凪の気持ちをわかってるし、凪も彗の気持ちを分かってる。あれだけお互い支え合ってたんだから。
「あとは、颯輔さんと凪だけだ」
向き合って、話さなきゃいけないのは。
そう付け足すと、目を丸くさせた颯輔さんは困ったように笑う。
「……祠稀くんって、少し凪に似てるね。人のために発言して、動けるところとか」
まさか。そう見えたとしても、回り廻って自分のためだ。
ああ、その点で言うなら凪とは気が合いそうだな。



