僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「……彗……いいんだ」

「ごめんなさ……っ」


たまらなくなったのか、隣にいた有須が彗の右手を包み込んだ。我慢できそうにない涙を堪えながら、小さな両手で、彗の左手も一緒に。


それを見た颯輔さんは一呼吸置いてから、再度声をかける。


「謝らなくていいんだよ、彗」


首を左右に振る彗はすっかり俯いてしまって、その隣にいる有須は、大丈夫、頑張れと、無言で励ましてるようだった。


「……俺は、凪を引き取った後も、一時だけど小さい彗を引き取った時も……いつだって幸せだったよ。大変な時期で……忙しくて、凪と過ごす時間も限られていたけど……彗がうちに来てくれてから、凪は本当に楽しそうだった」


自分を見ない彗に投げかける言葉を、颯輔さんはどんな想いで口にしてるんだろう。


「あの頃、3人で撮った写真を見ると、いつも思うよ。楽しいことばかりじゃなかったけど、確かに幸せだったなって」


……このまま決まるのか。


「……きっと、祠稀くんと彗が言ってたことは当たってる。俺はどこか逃げていて、凪と向き合うことを恐れてた。放り出したつもりも、邪魔だと思ったこともないけど……凪や彗を苦しめていたなら、俺が自分で気付くべきだった」


凪がいないこの場で、颯輔さんの返事は固まっていくように思えた。


自分はどうするべきか、凪になんて、伝えればいいのか。


「大切だから、凪を家に縛り付けておきたかったし、自由にもさせてあげたかった。その矛盾が、ダメだったね……」


……生半可な覚悟をしていたのは、俺も同じのくせに。


それでも彗や颯輔さんを焚き付けて、彗に言いたいことを言わせて、颯輔さんが凪と向き合えばいいと思った。


そう仕向けたと言っても間違いではないかもしれないけど。結局決めるのは自分で、個々の自由だ。


「……凪を大事にしてくれて、ありがとう」


その言葉に彗も有須も顔を上げた。颯輔さんは優しく微笑む。そして軽く頭を下げると、そのまま、震える声で言った。