颯輔さんは、凪の気持ちに気付いてる。凪も、想いがバレていることに気付いてる。
彗が、確認したわけじゃないって言ってたけど……俺でも同じように思う。
『……お互い気付かぬふりして、今にも崩れそうな家族ごっこ。それでもお互い、崩れないように必死なんだ』
「……」
颯輔さんは自分が凪に愛されてると口にしない。それがどうにも、もどかしかった。
凪は颯輔さんを男として愛してるらしいけど、その辺どうなわけ?って、気軽に聞けたらいいのに。
そんなこと、しねぇけど。
「颯輔さんって親バカだと思うけど。突き詰めると、自分を守りたいだけだよな」
「……祠稀……?」
有須が訝しげに名前を呼んできたけど、俺は颯輔さんから目を離さない。
「前に、凪が家を出て幸せになるなら、拠り所ができなら、そのほうがいいと思ったって言ってたけど。凪が家を出てほっとした部分、あるんじゃないんすか」
「……」
「凪が報われない恋をしてるって知った時、怒ることはできなかったって。親バカだからって言ってたけど。それは凪のためじゃなくて、自分のためだ」
目を見て言う俺を、颯輔さんも見返してくる。
その瞳に動揺が滲んだことに気付くのに、時間はそうかからなかった。
「俺に焦らないでって、凪が元気ないところ見せるなんて心許してる証拠だからって言ったの、覚えてます?」
『凪のこと、見ててあげて。欲を言うなら、支えて、守ってあげてほしい』
自分は何もできないからって言ってた。
妻いわく乙女心が分かってない?
知るか、そんなこと。
凪をいちばんに見ててやらなきゃいけないのは、支えて守ってやらなきゃいけないのは、俺でも彗でも有須でも早坂でもねぇだろ。
「アンタは凪を傷付ける自分になりたくなくて、逃げてるだけだ」
「――っ祠稀!」
「……なんだよ」
俺に睨まれた彗は眉間にしわを作り、薄茶の瞳に水の膜を張っていた。



