僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「驚いたよ、ここに早坂がいて。みんな知り合いなの?」


人数分のマグカップがテーブルにそろうと、颯輔さんが言う。


「ええ、まあ。凪繋がりで、必然的に」

「……そっか」


マグカップを手にした颯輔さんはそれだけ言って、ココアを口に含んだ。昨日、凪が作り置きしていたもの。きっと……颯輔さんが作り方を教えたもの。


「早坂が今ここにいて、凪がいないのは、関係してる?」


コン、と颯輔さんが静かに置いたマグカップが音を立てると、いち早く答えたのは彗だった。


「凪は今日……帰らないよ。いないんだ」


どうとでも取れる言い方。颯輔さんは彗の言葉に目を伏せ、そのまま微笑んでみせる。



「どこかに行っちゃった?」

「……」


彗が口を噤んでしまったのも、俺や有須が目を見張ったのも、颯輔さんが気付いているような口ぶりだったから。


誰かの家に泊まりに行ったとか、オールで遊びに行ったとかならまだしも……どこかに行った?


「分かるよ……早坂がいたことで、なおさらね。俺が今日来たのは、この前凪の様子が変だったからなんだ」


顔を上げた颯輔さんの笑顔は困ってるというよりも、申しわけなさそうな感じがした。


「電話で聞いても凪はごまかすから直接来たんだけど……そっか。遅かったね」


……違う。悲しそうな、力のない笑みだ。


「早坂がここにいるのも、そういうことでしょ? ……凪がいるならまだしも、早坂が高校生3人の中に交じるなんて信じられない。仕事以外じゃイヤだもんね」


……それはつまり、早坂は凪がいれば、凪のためなら、なんでもするだろって言ってるのと同じじゃね?


「それで早坂は、こっちに住んでるの?」


予想通り、リビングの空気はけっして軽くなかった。それは颯輔さんの言い方が、疑問ではなく肯定して話してるから。


否定も、ごまかしもきかない。そんな気がした。