「――早坂……?」
リビングへ1歩踏み入れたところで立ち止まった颯輔さんの横顔は、驚きの一言に尽きる。
それを確認した俺は、緊張感丸出しで颯輔さんを見る有須の背中を叩き、挨拶を促した。
「あ、こ、こんばんは! 颯輔さん! あの、今、コ、ココアをあっためてるので! 先に……その、座ってお待ちください……」
噛み過ぎな上に声が小せぇ。
そう思いながら、早坂から視線を逸らした颯輔さんは、しどろもどろな有須に何か感じ取ったみたいだ。
「ありがとう。遅くにゴメンね」
「いえ……」
颯輔さんは微笑み、テーブルの前に座る彗と早坂の目の前まで足を進めた。
「久しぶり、でもないか。彗、元気にしてた?」
「……うん。元気」
「そう。よかった」
隣で有須がマグカップにココアを注ぐ音を聞きながら、俺は颯輔さんがコートを脱ぐ様子を見ていた。
「――…久しぶりなのは、俺たちのほうだね」
そう言った颯輔さんの手は脱いだコートを畳もうとするけど、立ち上がった彗が受け取ってしまう。
……マメなやつ。
彗はコートをかけに、自分の部屋へ向かった。
これじゃあ、わざとふたりにさせてるみたいだけど、それはそれで別にいい。
「……お久しぶりです、そーすけサン」
問題は、こっから。
彗が部屋から戻ってくると、颯輔さんは「ありがとう彗」と言って、ソファーに腰を下ろす。
それと同時に有須に腕を突かれて、見下ろした先にマグカップが3つあった。
「運ぶか?」
「ううん……そこのお菓子だけ持ってもらっていい?」
すでに準備されていた手軽な菓子を持って、俺は有須の後に続く。
洒落たプレートに乗せられたクッキーやマカロンに、手を付ける暇なんてないだろうなと思った。



