僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「あ、こんばんは! 今回は祠稀くんがお迎えかぁ」


ドアを開けると、ネクタイを緩めた颯輔さんが笑顔を向けてくる。スーツの上に薄手のコートを着て、手にはビジネスマンらしい黒いレザーバッグ。


「どーも。俺で残念でしたね」

「そんなことないよ! でも祠稀くん、いつになったら凪が出てくれると思……」


先に廊下へ上がると、背後で靴を脱いでるはずの颯輔さんの声が途切れる。


「ごめん! お客さん来てた!?」


いきなり顔を上げた颯輔さんに驚き、その足元に目をやる。


ああ、早坂の……。


艶出しされた革靴は、どう見ても社会人が履くような大人もの。


「まあ、お客はお客ですけど。気にせずどうぞ?」

「えぇ~……ホントにいいの?」


颯輔さんの悩ましげな声は届いていながらも、リビングへ向かう俺は「どーぞどーぞ」と生返事しかしなかった。


一瞬、このまま帰ってもらえるかもしれないと思ったけど、早坂は隠れないと言った。だったら会わせてみたくもなる。


2人がこんな場所で会って、どうなるかなんて分からないのに。


胃が捻じれるような緊張感も、冷や汗が出そうなほどの緊迫感も、確かに感じているのに。


知りたい。見たい。
どうなるのか、この眼で。


これはホントに、俺の身勝手すぎる好奇心。それ以上に、凪を見つけ出すためなら何も厭わないと思う気持ち。


早坂と颯輔さんが会ったところで、何も変わらないかもしれないけど、変わるかもしれない。


凪に繋がる何かが、見つかるかもしれない。


「人ってずるいよな」

「え? 祠稀くん、今何か言った?」

「何も。どーぞ」


言いながらリビングへ続くドアを開けてすぐ、俺は左側にあるキッチへ向かった。ココアを火にかける有須がいる。


そしてリビングには、淹れ立てのコーヒーを手にした彗と、颯輔さんの後輩であり、娘の元カウンセラー。