「はー……ま、もう来ちゃったもんはしょうがねぇだろ。成り行きに任せよーぜ」
「……」
成り行きといった俺を、彗はいささか不満げな目で見つめてくる。
「ハイハイ。どーせ俺は勢い任せで、その場任せで、虚勢を張るのが得意なだけですよ」
そう言って舌を出すと彗は目を丸くさせて、すぐに口元を緩ませた。目を伏せて、おかしそうだ。
「祠稀はやっぱり、鳥みたい」
「……なんでそうなんだよ」
意味分かんね。
そんな風に思いながら、前にも彗が同じことを言ってたのを思い出す。雨の日でも嵐の日でも、飛んで行けそうだと。
チカには昔、俺は足元を照らす光そのものだと言われたこともあった。どこまでも自由に、連れて行ってくれるからと。
そのたび俺は理解できなくて、苦笑したけど。
俺の向こう見ずな性格が、少しでも彗やチカの陰る気持ちを浮上させていたなら。
立ち止まってしまった足を、1歩でも前へ進ませていたなら……嬉しいことだと思う。
「彗がウジウジし過ぎなだけだろ」
隣に腰掛けた俺を見て、彗は「……ひどい」と垂れ目がちな瞳を向けてきた。
そんな彗の頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でると、ほころぶ彗の口元。
あー……ハイハイ、かわいいかわいい。凪が溺愛するわけだよ。
照れ隠しであった俺の行動を素直に受け入れた彗は、相変わらずボサボサになった髪なんて気にしない。
「……意外。仲良しなんだね」
早坂の言葉に体中むず痒くなっていると、マグカップをトレーに乗せていた有須がくすくすと笑った。
こんな和やかな空気でいていいのかも微妙だけど、やっぱり俺はこれでいいと思う。
どうせ今だけだ。颯輔さんがここに来れば、否が応でも空気は変わる。
「颯輔さんは……ココアだよね」
トレーに4人分のマグカップを乗せた有須は、そう言って立ち上がる。
「あったかいのがいいよ、きっと」
彗の言葉に微笑んで、有須はキッチンへ向かった。
そして鳴り響く、インターホン。
……熱いココアは少し、待ってもらうことになりそう。



