僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「うん、聞こえたよ」


そう言いながら、俺は1歩も動かない。見上げてくる凪は乾いた唇を震わせた。


「あたしは彗のことだって憎い」


凪の言葉にきっと後ろのふたりは驚いたと思う。凪もそういうつもりで言ったんだろうけど、俺は特別驚くわけでも、傷付くわけでもなく、


「うん」

と、微笑むだけだった。


ドンッ!と俺の胸元を強く押した凪は、頭に血が上ったんだと表情で分かる。


「今のあたしの状況、分かってんの!?」

「分かってるから、ここに……」

「サヤに余計なこと言ったの彗たちでしょ!!」

「……」

「ホントに信じられないっ! もう顔も見たくないし、アンタ等に構ってる場合じゃないって言ってんの!!」


惜しげもなく怒りを露わにする凪に、俺は口を噤んでしまったけど、代わりに微かな息使いが耳に届いた。


「知るかよ、そんなこと」


嘲笑を含んだ、祠稀の言葉。


「凪が言ったんだろ。俺らがしようとしてることは正しいのか、間違ってるのか、よく考えろって」


凪が俺の背後を睨んだのとほぼ同時に、祠稀が俺の横に立った。


「これが俺らの正しいだ。人によって何が正しいのか正しくないのか違うと思うって……そう言ったのは凪なんだから、もちろん納得してくれるよな?」

「~っだからって! 大人しく納得するとでも思ったわけ!?」

「さー……まぁ、迷惑だろうなとは思ったし、実際本気で怒ってるみたいだけど。それが何? 納得いかないのも、怒ってんのも、俺らだって同じですけど?」


凪が腕を振って投げつけた財布を、祠稀は難なく受け止める。


「くれんの? 軽いからいらねーけど。あー……金に困ってんの? あの120万、返してやろうか」

「うるさい黙れ!!」


凪の財布を上に投げてはキャッチして、祠稀は笑う。だけどその瞳は決して、楽しそうではなかった。


……凪は祠稀を相手にすると、感情が剥き出しになる気がする。


売り言葉に買い言葉というよりは、祠稀だからって気が――…。


「何してるの……」