僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



凪が、サヤを想うことがなければ、俺は颯輔さんの……新しい父親の幸せを望むことができる。


凪がいなくたって、俺は祠稀と有須と笑い合いながら、一緒に生きられる。


凪は俺の幸せを望んでくれたから、あのマンションを出たんでしょ?


だけど、それがいちばんの願いじゃないよね。


サヤへの想いを消すこと。今それが1番の願いだとしても、やっぱり何か違うんだ。



「凪……俺は、待つだけなんて嫌だよ」

「……っ」


近付く俺に、凪は体を強張らせる。


……焦らなくていいんだよ。今、急いでひとりにならなくたっていいんだ。


サヤへの想いが消えたら、凪は戻ってきたいって思ってるんでしょう?


颯輔さんのいる家に。俺と祠稀と有須がいるあのマンションに。


なんの偽りもない、まっさらな自分で帰りたいって……それが凪の、いちばんの願いのはずだ。


「迎えに来たんだ……。帰ろう、凪」


痩せて、疲れきって、クマができてる凪を放置するなんて。眠れずに、夜通し泣いてる凪をずっとひとりで頑張らせることなんて、俺にはできない。


「……帰らない」


目の前まで来た俺に対して、凪は震える声で言う。


「……無理。今の……このままじゃ……」


……もう、限界だと感じた。焦り過ぎてるとも思った。


サヤへの想いは高校の3年間でどうにかしようとしてたはずなのに……。


まだ、2年以上あるよ。それとも凪にとっては、もう2年しかない?


「凪……」


だからかな。再び俺を睨み上げた凪に、怒りでも悲しみでもない感情が浮かぶのは。


「……帰って。顔も見たくないの」

「お前いい加減にしろよ」

「祠稀っ!」


痺れを切らせたように祠稀が声を荒げ、それを有須が止める。だけど凪は煩わしそうに視線を床に落とし、眉を寄せるだけ。


……今日の凪はずいぶん、感情を表に出すな。悪態をつく時はいつだって、笑ってたはずなのに。


そんなことばかり考えてる俺に、凪は視線を投げかけて来る。


「……ん?」

「……あたしが言ったこと、聞こえたでしょ」


……帰って、顔も見たくないって?