かわいい子がいるもんだなぁ……。
立ち上がろうと膝に力を入れると、あたしはまたしゃがみ込んでしまった。今度は、椅子の背もたれに隠れる体勢だったけれど。
今日、隠れてばっか……。
あたしの眼はいつも目敏く、逢いたくない人物を見つけてしまう。
立ち上がろうとしたあたしの視界に入ったのは、サヤと緑夏ちゃんだった。
『……また明日、来るよ』
ついでに、ね。
少なからず女の子の笑顔で癒された心に、またどんよりと影が落ちてくる。
「今日……で……だった?」
サヤの微かな話声に身を縮めて、椅子と椅子の僅かな隙間から、ふたりの姿を探した。
4列目の後ろに隠れるあたしの、前の前。3列目の席に、ふたりは腰かけている。
あたしに背を向けている形のふたりは当たり前に、隠れる人影に気付くことはなかった。
「……」
エスカレーターに向かうとふたりの視界に入ってしまうから、時間が過ぎるのを待つしかない。
ガヤガヤとうるさい待合ホール。サヤと緑夏ちゃんから数十センチしか離れていない緊張感が、あたしを嫌な気分にさせる。
……エレベーターってどこだったかな。
ちらりと目だけ椅子の背もたれから出してみる。
あたしの目の前には、サヤと緑夏ちゃんや他の人たちの後ろ姿。そして左側にエスカレーター。
産婦人科の受付に、右側は……確か心療内科か栄養相談室があった気がする。右側に行けば、ふたりの横は通るけど、前は通らなくて済む……。
見つからないように、どうにかここから抜け出せないかと考えた。
……気付かないよね。無理かな。
別にここに隠れてたっていいんだけど、いたくないという気持ちのほうが勝る。
フードを被り直し、四つん這いで右側の端まで行こうとした時。
「は!?」
という、サヤの声に動きが止められた。
傍から見れば自分は相当怪しいと分かっているけど、サヤの声の大きさにも違和感を覚える。
「なんて……今……たの?」
決して静かではない周りの音のせいで、サヤの声は聞きとれない。
……何、喧嘩……?



