僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「「……」」


席を埋め尽くすたくさんの背中を見ていたあたしの足元に、小さな人影。


じっとあたしを見上げてくるのは、4歳くらいの女の子だった。


「ひとり? お母さんは?」


しゃがみ込んで女の子の目線に合わせると、女の子は後ろを振り向いて、受付のほうを指差す。ひとりの女性が会計を済ませてるようだった。


「まっかねー」

「ん? ああ……赤が好きなの?」


前髪に触れるあたしを見つめる女の子は、コクンと頷く。ツインテールの女の子の髪は黒いけれど、括りつけられたゴムは赤色だった。


「そっか。……ねぇ、妹か弟ができるの、楽しみ?」


意味分かるかなと頭の隅で思いながら聞くと、女の子は大きく頷いてくれる。


「あのね、あのね! あたしね、おねえちゃんになるのっ! ……なれるかなぁ?」

「ははっ! うん、なれるよ。大丈夫」

「おねえちゃんも、おねえちゃん?」

「うーん……そうだね。弟がいるかな?」

「かわいい!?」


目を輝かす女の子に面食らって、あたしは笑ってしまう。あまりに無邪気で、曇りのない子だったから。


「あ、ほら。お母さん探してるよ」


女の子のお母さんらしき人が、財布を鞄に押し込みながらキョロキョロと辺りを見渡して、すぐこちらに気付いた。


「すいません……っ」


そう言いながら駆け寄ってくるお母さんに微笑んで、女の子に視線を戻す。


「勝手に動いちゃダメでしょっ」と怒られてしまった女の子は、少し口を尖らせてからあたしに向き直った。


「おねえちゃんみたいに、キレイなおねえちゃんになるっ」

「すいません、この子ったら……」

「いえ……楽しみですね。2人目のお子さんも、お姉ちゃんになるこの子も」


そうあたしが言うと、お母さんは微笑んで、軽く頭を下げた。


「ばいばいっ」


お母さんに手を引かれて帰っていく女の子は、満面の笑みで手を振ってくれる。


あたしも口に笑みを浮かべながら手を振り返して、その親子を見送った。