―――…
「はい、おつり。お大事にねー」
「……」
軽く頭を下げ、売店を後にする。手には小銭と温かいココア。
売店を出てすぐ、受付や待合室の人混みをぼんやりと眺める。総合病院というだけあって、敷地も広く、外来患者も多い。
壁にかかる時計を見ると、午後2時15分くらいだった。
……暇だな。
立ち止まっていた足を動かして、エスカレーターのほうへ向かう。
入院生活2日目。今日も朝と昼に検温や血圧を測ったりする時だけ病室にいて、病院内をうろついている。
これと言って具合が悪いわけじゃないけど、ダルさと頭の鈍痛はまだ残っていた。
……食欲もないし、また不眠っぽくなったしな……。
「!」
3階へ上がったところで、急いで2階へ下りるエスカレーターに向かった。視界に入った看護師に、鉢合わないようにするために。
あっぶな……また怒られるとこだったよ……。
本来、行動を共にしなければいけない点滴台を、あたしはまたも病室に置き去りにしたから。
勝手に点滴針を抜いた右腕をさすりながら、2階へと足を踏み入れる。
暫く2階をうろうろしてから、3階に戻ろう。そう思って、エスカレーターから離れた。
「………」
ここ、産婦人科か。
他にも診療科はあるみたいだけど、あたしの目の前にいるのは、私服の女の人ばかり。
病衣ではなく、昨日サヤが置いていった服を着るあたしは、ここでは少し浮いていた。
黒い、上下が繋がるタイプの部屋着で、一応パジャマみたいなものなんだけれど。髪色も目立つだろうと思い、背中に垂らしていたフードを深く被る。
規則正しく横に10席ほど並び、それが4列ある産婦人科。特に意味もなく、たくさんの妊婦さんが座るほうへと足を向けた。
やっぱり20代の人が多く見えたけれど、30代、稀に10代に見える子もいる。
……全員、妊婦……ってわけでもないか。
最奥の列まで歩いて、くるりと反転する。



