「しつこいな!! 話すことなんかないってばっ!」
吐き捨てるように声を出すと、みるみる内にサヤの表情が暗くなっていく。
あの頃は、ちょっと甘えてみせれば、簡単に喜んでたくせに。
あたしが濁せば、あっさり聞き出すのをやめたくせに。何事もなかったように、ふつうに接してきたくせに。
「だいたい、前遊びに来た時あたしの様子が変だったって、今さらじゃん! その時に聞けばよくない!? 今になってああだこうだ言われたって、ウザいだけだから!」
「な、凪ちゃ……」
「うるさいっ! 黙って!!」
口を出そうとする緑夏ちゃんにまで暴言を吐いたあたしを、サヤは本当に、本当に悲しそうな目で見つめてくる。
けれどあたしは、そんなサヤでさえも思い切り睨んだ。
「帰って。もう来ないで」
それだけ言って、乱暴に布団を頭から被った。ベッドの背もたれが上がってるから、ちゃんと横にはなれなかったけど。
あたしはサヤがいるほうに背を向け、布団の中で息をひそめた。
「……また明日、来るよ」
そんな力ないサヤの声が耳に届いたけど、返事をすることはない。
椅子から立ち上がる音と、スリッパが床に擦れる音。ドアの開閉する音はあまりにも小さく、消えていく足音で少し布団を捲った。
僅かに顔を出しても、病室にいるのはあたしだけ。
「……っ……う……」
瞼をキツく閉じて、唇を噛む。涙が零れないように。嗚咽が漏れないように。強く、強く、拳も握り締めた。
ひどく傷付いた顔をしたサヤの顔が、頭から離れない。
――違う。
ごめん、違うの。
そんな顔をさせたいんじゃないのに……。
本当は全て曝け出したいのに、できないだけなの。
あたしがサヤに想いを告げたら、今よりもっと、もっと、悲しい顔をさせると分かってるから。
……ごめん……ごめんなさい。お願いだから、分かって。聞きわけのない、父親に頼らない、反抗期の娘だとでも思って。
あたしの気持ちがなくなりさえすれば、そんな顔はさせないから。
想いが消えれば、あたしはきっと“いい子”に戻ってみせるから。
『愛してる』
そんな言葉は、死んでも言わない。



