僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「しつこいな!! 話すことなんかないってばっ!」


吐き捨てるように声を出すと、みるみる内にサヤの表情が暗くなっていく。


あの頃は、ちょっと甘えてみせれば、簡単に喜んでたくせに。


あたしが濁せば、あっさり聞き出すのをやめたくせに。何事もなかったように、ふつうに接してきたくせに。


「だいたい、前遊びに来た時あたしの様子が変だったって、今さらじゃん! その時に聞けばよくない!? 今になってああだこうだ言われたって、ウザいだけだから!」

「な、凪ちゃ……」

「うるさいっ! 黙って!!」


口を出そうとする緑夏ちゃんにまで暴言を吐いたあたしを、サヤは本当に、本当に悲しそうな目で見つめてくる。


けれどあたしは、そんなサヤでさえも思い切り睨んだ。


「帰って。もう来ないで」


それだけ言って、乱暴に布団を頭から被った。ベッドの背もたれが上がってるから、ちゃんと横にはなれなかったけど。


あたしはサヤがいるほうに背を向け、布団の中で息をひそめた。


「……また明日、来るよ」


そんな力ないサヤの声が耳に届いたけど、返事をすることはない。


椅子から立ち上がる音と、スリッパが床に擦れる音。ドアの開閉する音はあまりにも小さく、消えていく足音で少し布団を捲った。


僅かに顔を出しても、病室にいるのはあたしだけ。



「……っ……う……」


瞼をキツく閉じて、唇を噛む。涙が零れないように。嗚咽が漏れないように。強く、強く、拳も握り締めた。


ひどく傷付いた顔をしたサヤの顔が、頭から離れない。



――違う。
ごめん、違うの。


そんな顔をさせたいんじゃないのに……。


本当は全て曝け出したいのに、できないだけなの。


あたしがサヤに想いを告げたら、今よりもっと、もっと、悲しい顔をさせると分かってるから。


……ごめん……ごめんなさい。お願いだから、分かって。聞きわけのない、父親に頼らない、反抗期の娘だとでも思って。


あたしの気持ちがなくなりさえすれば、そんな顔はさせないから。


想いが消えれば、あたしはきっと“いい子”に戻ってみせるから。




『愛してる』


そんな言葉は、死んでも言わない。