僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「凪……」


あたしの頬に流れたものを見て、サヤは切なさを声に乗せる。


「……凪、ねぇ……どうして泣くの?」


俯いたままサヤの顔を見ず、あたしはかけ布団に染み込む涙だけを視界に入れた。


「……逃げてるわけじゃない」

「……」

「あたしは……、頭の中が、ぐちゃぐちゃで……気持ちの整理をしたいだけだよ」

「……その理由は、話してくれないの?」


ギュッと布団を握って、背を丸める。


「ひとりで考えたいの……」


ごめんなさい。そう、か細い声で付け足すと、サヤは小さな溜め息を漏らした。


「ひとりじゃ解決しなかったから、倒れちゃったんじゃないの?」


――ああ、もう。


「しんどいなら、言っていいんだよ。何があったの? ……言ってくれないと、俺はどうにもできない」

「……フッ」


思わず零してしまった笑い。あたしは涙なんて最初から流してなかったような笑顔を浮かべ、顔を上げた。


「ははっ! 冗談だよ! もしかして信じた?」


くすくす笑うあたしの視界に緑夏ちゃんが映ったけど、完全に無視してサヤに微笑む。


「帰ってきたのは本当に気まぐれで、マンションを出たのは、喧嘩しちゃったから気まずくてっ。聞いてないの? 彗たちから」


あたしを見るサヤの目が、最初は見開かれたていたはずなのに。段々と影を落として、視線は落とされていく。


「倒れちゃったのは、まあ……そういうこと? あたしが一方的過ぎたから、ちょっと頭冷やさなきゃなーって」


明るい声が壁に反響しなくなると、病室は一気に静寂になる。

サヤはゆっくりと顔を上げ、あたしを見据えて言うんだ。


「……そっか」


そう、サヤは、それだけ言えばいい。



「喧嘩の原因は何?」


笑顔で『うん、だから大丈夫』とあたしが言うはずだった。


けれどサヤは、あたしを瞳に捉えて放さない。


いつまでも聞く、話してくれるまで、何度でも。そんな真摯な眼差しをして、サヤは言った。


「ちゃんと話して、凪」