ギュッと強く拳を握って、顔を上げた。
話してくれと言わんばかりの表情をするサヤに言うことはひとつだけ。
「帰って」
中学生のあたしなら、緑夏ちゃんにだけ帰ってもらっていた。
そしたらサヤに甘えて、抱き締めてもらって、何も言わずに終わらせてたけど……今はそんなことしない。
あたしは、あの頃と違う。
「……やっぱり、俺に話す気はないんだね」
違う。
話すことなんか何ひとつない。
「凪はそうやって、久美ちゃんにも彗たちにも、話さなかったんでしょう?」
「……」
……は? なんで今ここで、久美と彗たちが出てくるの。
「知ってるよ……凪が2週間前から、こっちにいたこと」
目を見開いたあたしから、サヤは初めて視線を逸らす。眉間にシワを刻んではいるけど、先ほどまで感じられた怒りは消えていた。
……なん、で、バレて……彗がサヤに連絡した? まさか。そんなことするはずないって確信があった。
もし連絡してたとしても、あたしがどこにいるかなんて誰にも検討がつかなかったはずだ。
携帯は電源を切ってたし、3日目で捨てた。
2週間前からこっちにいたなんて、なおさら分かるはずが――…。
『げえ! また親だよ~! しっつこいなぁ、もう……』
『ねえ、凪。昨日はどこに泊ってたの?』
――まさかと思ったのに、あたしが地元に帰ってきたのを知ってるのは……久美や優太たちだけだ。
「……久美の親に、連絡したの……?」
「……そういうことになるね」
……何、なんで。
そうだとしても、おかしい。
サヤが久美の親に連絡することなんて、中学時代の連絡網を使えば簡単だけど……。
地元に帰ってきた次の日には、あたしの動向がバレてたってことじゃない。
ありえない。
もし彗たちがサヤに連絡してたとしても、あたしがここにいることなんか、予想できるはずがない。



