僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「じゃあ、どうして帰ってきたって連絡くれなかったの?」


逢いたくなかったから。なんて、言うはずないけど。


「フラッと遊びに来ただけだもん。ただの気まぐれだよ」


目が覚めてから初めて、笑ってみせた。そんなあたしにサヤは微笑み返してはくれない。


「気まぐれで帰ってきて、倒れるまで何してたの?」

「……」


やけに食いついてくるなとは感じても、あたしはそれさえも利用して笑う。力なく、申しわけなさそうに。


「……別に何も。分かるでしょ? ひとりになりたかったんだよ」


口元に笑みを浮かべながら、そう言った。


頑なに口を閉ざしても、全て嘘でごまかそうとしてもいいけど。それじゃあ、今のサヤはきっと納得しないと思ったから。


溜めこむ癖があって、不眠症で、だけど稀に正直に話す娘を演じてみせた。


「……だから、帰って。今はひとりになりたい」


もうこっちにいるのがバレて、会ってしまったならしょうがない。


なんとかなる。そう思ったけれど、サヤの顔は未だに険しいままだった。


「いつもそう……凪はそうやって、自分の気持ちを言う時があるのに。けっきょく誰にも……違うね。俺にだけは絶対、頼らない」

「――…」


言い直された言葉に、胸がざわつく。


サヤにだけは絶対頼らない。それは確かに、事実だった。


「凪はいつだって平気なふりして笑ってるけど……そうじゃないよね。殻に閉じこもって自分を守ってるようで、本当は傷付けてるようにしか見えない」

「……言ってる意味が分かんないよ」


そんな台詞は、カウンセラーの早坂先生から聞くだけで充分。


サヤは気付かなくたっていい……気付かないふりをしてればいい。あたしの、女の部分なんて。


「凪、ちゃんと話して……今度は何が不安なの? また眠れなくなるくらい、何を怖がってるの?」


じっと見つめてくるサヤから、緑夏ちゃんに視線を移した。わずかに肩を震わせた緑夏ちゃんは口を開きかけて、閉じる。


あたしは小さな溜め息をついて、伸びた自分の爪に目をやった。



……何を震えてるんだ、あたしは。