僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



いっそのこと彗を愛せたらよかった。こんなに大好きで、こんなにも愛しいのに。


喉から手が出るほど欲しいのは、サヤだ。



握っていた携帯への握力を緩め、顔を上げた。


辺りはいつの間にか明るくなっていて、朝焼けのグラデーションは消えている。携帯を胸に抱いたまま、広大な川に視線を落とした。


……誰よりもあたしをいちばんに想ってくれた彗だから、分かるでしょう?


サヤの愛が欲しい。あたしを女として愛するサヤが、どんなものよりも欲しいの。それ以外何もいらない。


だけど……望んではいけない。望んだって手に入らない。


だから彗、あなたの幸せをいちばんに望んだんだよ。


あたしのことを、あたしの気持ちを、誰よりも知ってる彗だから、一緒にいちゃいけない。


あたしがそばにいなければ、彗はサヤを大事にできる。


憧れて、尊敬してやまない“颯輔さん”の幸せを望むことができる。祠稀と有須と笑い合いながら、一緒にいられる。


そこにあたしは、いなくていい。……いたくない。


――あたしが始めた同居生活。始めたのがあたしなら、終わらせるのもあたしの自由でしょう?



スッと腕を伸ばして、胸に抱いていた携帯を宙に掲げる。


……こんなことばっかり。


心は未だ、あの頃に凌駕されたままで。幾度考えても、想いは螺旋状に形を描くだけで。進んでも、進んでも、元に戻る。


あたしの手によって捨てられた携帯は、水飛沫をあげて川の底へ沈んでいった。


どうして?と訊くことも、助けてと訴えることもできず。持ち主に捨てられた携帯は、ただ静かに機能を停止させる。


「……ストラップ、付いてなかったもんな」


瞬きの間に見えなくなった携帯。落ちたと思う辺りをもう一度見てから、その場を後にした。



冷たい風に乗って雪が舞う。


水の中で溺れるあたしは、いつ沈むんだろう。