送られてきたメール。それは手紙を送り続けたあたしが何より待ち望んでいた、返ってこない彗からの返事だった。
バカじゃないの。バカだ、本当に、本当に!
何年前に送ったと思ってんのよ。もう中学生じゃないし、当たり前に話題が古いのに。今さらこんな返事をよこして、何考えてんの!?
メール機能を閉じた携帯を、両手で握り締めた。
「〜〜っ」
そこに顔を埋めて、歯を食い縛る。
強く、強く、唇を結んだのに、渇ききった喉から吐息が漏れた。
それはいつのまにか嗚咽になって、頬に流れた生温い涙は冷たくなっていく。
――振り返りたくない。
過去なんて、思い出なんて、やっぱりなんの役にも立たない。
……もういいんだよ。
あたしがいなくたって、彗は笑って生きていける。幸せになれる。
だから、連れてこなかったのに。だから、祠稀と有須に頼んだのに。
彗自身だって、それに気付いてるでしょう? 認めたくなかっただけで、本当は祠稀と有須と一緒にいたかったでしょう?
だから、いいんだよ。
それでいいんだよ。
それが彗の幸せだと思ったから、あたしのことは忘れていい。
それなのに……こんな、たくさんのメール。
帰ってきてとか、どこにいるのとか、そんなこと一言も書かないで。
離れていても、再会した時に何の穴もないように。そんな理由で始めた手紙交換を、またしようとでも言う気?
それともやっぱり、何も変わらないとでも言いたいの? 待ってるとでも、言いたいの?
バカな彗。
人が苦手で、どちらかと言えば嫌いなくせに。祠稀と有須をいっぱい怒らせて、泣かせたくせに。
どうしてあたしには、こうも甘いの。どうして、切り離そうとしないのよ。
「……彗……っ」
頭ごなしに怒って突き放したいのに、彗は目の前にいない。力任せに抱き付いてあげたいのに、今あたしはひとりだ。
優しい彗。
優しすぎて、いつかこの手で壊してしまいそう。
そう言ったら彗はきっと少し驚いてから、見開いた目の端を緩めて、「凪にならいいよ」って、微笑むんだ。



