僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



送られてきたメール。それは手紙を送り続けたあたしが何より待ち望んでいた、返ってこない彗からの返事だった。


バカじゃないの。バカだ、本当に、本当に!


何年前に送ったと思ってんのよ。もう中学生じゃないし、当たり前に話題が古いのに。今さらこんな返事をよこして、何考えてんの!?


メール機能を閉じた携帯を、両手で握り締めた。


「〜〜っ」


そこに顔を埋めて、歯を食い縛る。


強く、強く、唇を結んだのに、渇ききった喉から吐息が漏れた。


それはいつのまにか嗚咽になって、頬に流れた生温い涙は冷たくなっていく。


――振り返りたくない。


過去なんて、思い出なんて、やっぱりなんの役にも立たない。


……もういいんだよ。


あたしがいなくたって、彗は笑って生きていける。幸せになれる。


だから、連れてこなかったのに。だから、祠稀と有須に頼んだのに。


彗自身だって、それに気付いてるでしょう? 認めたくなかっただけで、本当は祠稀と有須と一緒にいたかったでしょう?


だから、いいんだよ。
それでいいんだよ。


それが彗の幸せだと思ったから、あたしのことは忘れていい。


それなのに……こんな、たくさんのメール。


帰ってきてとか、どこにいるのとか、そんなこと一言も書かないで。


離れていても、再会した時に何の穴もないように。そんな理由で始めた手紙交換を、またしようとでも言う気?


それともやっぱり、何も変わらないとでも言いたいの? 待ってるとでも、言いたいの?


バカな彗。


人が苦手で、どちらかと言えば嫌いなくせに。祠稀と有須をいっぱい怒らせて、泣かせたくせに。


どうしてあたしには、こうも甘いの。どうして、切り離そうとしないのよ。


「……彗……っ」


頭ごなしに怒って突き放したいのに、彗は目の前にいない。力任せに抱き付いてあげたいのに、今あたしはひとりだ。


優しい彗。

優しすぎて、いつかこの手で壊してしまいそう。


そう言ったら彗はきっと少し驚いてから、見開いた目の端を緩めて、「凪にならいいよ」って、微笑むんだ。