◆Said:有須
部活が終わって、急いで体育館に続く外の階段に向かうと、そこにいたのは遊志先輩だった。
「あの、わざわざすいません」
頭を下げたあたしに、遊志先輩は右手を左右に振った。
「構へん構へん! 凪に頼まれちゃ断われへんわ!」
いつもは祠稀か彗と一緒に帰っているけど、今日はふたりとも用事があって、凪は夕飯の準備があるから、ひとりでは心配だって凪が遊志先輩に頼んでくれたみたい。
それを、あたしは部活が終わってからメールで知った。
遊志先輩と、ろくに喋ったことないんだけどな……。
心の準備もできてないままだから、余計緊張するし、申しわけない。
「ひとりでも大丈夫なのにって、何回も言ってるんですけどね……」
「凪は心配性やからなぁ~」
苦笑いすると、遊志先輩はハッとして今度は両手を左右に振った。
「ちゃうで!? そりゃ凪に頼まれたら断れへんのは事実やけど、有須ちゃんを送るのが嫌なわけちゃうで!?」
必死な様子の遊志先輩に、ぱちぱちと瞬きを繰り返してしまう。
ほんとに凪のことが好きなんだ……。



