携帯……。
忘れていたわけじゃないけど、バッグの奥底にでも入ってるとばかり思っていた。
様々な思考が頭を廻り、相反する気持ちが交差して、恐る恐るポケットの中で携帯を掴んだ。
ストラップが付いていないからか、すんなりと取り出された携帯は変わらず赤い。
画面は真っ暗。電源を入れると、ぼんやりと明かりが灯った後“please wait”と表示された。
「……」
待ち受けになった瞬間、勝手に受信を開始する利器。
マンションを出た2日前、久美と連絡を取り終わってすぐに電源を落としたから、メールは届いてるとは思っていたけど。
「……多すぎ」
全部で35件。
受信ボックスにずらりと並ぶ未開封のメールはほぼ全て、彗からだった。
昨夜の10時から深夜2時までの間にだけ、有須と祠稀、遊志やチカに大雅まで、1通ずつ送ってきている。
あたしが遊志と別れて駅に向かったのは、一昨日の夕方3時半頃だ。
久美と連絡を取り終わって、有須にメールを送って電源を落としたのは6時くらいだったと思う。
置き手紙に気付いたのは、彗か祠稀のどちらかが先だと踏んでるけど……。
彗から1通目のメールが受信されたのは、あたしがマンションを出て約8時間後。日付が変わって30分ほど経った頃だった。
画面をスクロールさせながら、彗という名前と受信時刻をひたすら眺める。
ほぼ一定の間隔を開けて送られてきていた彗からのメールは、今から1時間ほど前で止まっていた。
4時12分。その前は3時2分。その前は2時6分、1時5分。そして、0時1分。
他の34件の内容は分からない。だけどその0時1分に送られてきたメールだけは、何が書かれているか分かった。
約1時間置きにメールをしてくる彗は、寝てないんだということも。
「……バカじゃないの」
0時1分に送られてきたメールだけ開いて、目に飛び込んできた文字。
久美も優太も忘れていることなのに。あたし自身、どうでもいいことなのに。
――彗。ちゃんとあたしが書いた手紙、読まなかったの? 読んでも意味が、分からなかったの?



