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ピンクからオレンジへ、黄色から段々と白く、青へ。綺麗なグラデーションを作る朝焼けを見ながら、あたしは寒空の下に身を置いていた。
寒い……。
優太の家から抜け出して、駅のコインロッカーから荷物を取り出してみたものの……どうしたもんかな。
徒歩で閑散とした住宅街も抜けると、街と街を繋ぐ橋梁に辿り着いた。歩道と道路を有した橋を中間地点まで歩いて、立ち止まる。
……こんな場所あったっけ。
首下あたりまである柵に手を乗せると、わざわざ下を見なくたって、眼前には大きな川が流れていた。
朝焼けを受けて煌めく水は、遠くの海に繋がっているはず。あまり来たことのない場所まで歩いてきたから、よく分からない。
「……静か」
雪の積もったコンクリートの地面はまっさらで、足跡すらなかった。車のエンジン音も聞こえない。
凍て付くような寒さは肌を突き刺し、吐く息を真っ白に染め上げる。
まるで世界にあたしだけみたい。
そんなファンタジーな考えはすぐに自嘲へと変わった。
――数時間前、あたしと優太はお互いに何度か果てた。
相手と自分の性欲を貪り尽くして、充分に満たして、そのまま眠りにつく。
あたしは何度も経験してきたことだけど、それは優太も同じだろうと思う。
朝の4時に目が覚めたあたしに、優太は背を向けて寝息を立てていた。好きな女でもなければ、本命の彼女でもないあたしには、それくらいでちょうどいい。
都合がいいのなんて、お互いさまなんだから。
今日は、久美の家に泊らせてもらおうかな。別に、また優太の家でもいいけど……。
「……」
鉄柵に置いていた手が、ひどく冷たくなっていることに気付く。感覚より先に、かじかんで赤くなった指先が目に入った。
片方の手で4本の指を包んで温めてみるけど、両方の手が冷えていたから大した効果はなくて、仕方なくコートの両ポケットに手を突っ込んだ。
すると、右のポケットに入っていた物が手に触れる。



