時刻が夜10時を回った頃。まるで緊張感のない警官に「早く帰りなさーい」と注意されたことがキッカケで、あたしたちは帰ることになった。
それでもダラダラと時間を過ごすのは、昔よく見た光景。
「あー、コンビニ。コンビニ寄ろうよ」
「賛成ー。寒いし、飲みもん買うべ」
「凪はーっ?」
気付くとみんなコンビニに入る直前で、歩くのが遅いあたしに振り返っている。
「その辺にいる」
コンビニの駐車中を指差すと、「分かったー」とみんなゾロゾロと店内に入っていった。と思ったら、久美に何か言われた優太だけが、外に残っている。
「はは。どしたの、買うもんないの?」
笑いながら近付くと、優太はムスッとしていた表情を崩し、諦めたように口を開いた。
「凪がひとりじゃ寒いし、かわいそうって。意味分かんねー」
「それでも残ってくれたの? ありがと」
深い意味もなく発した言葉が、優太の表情で意味あるものに変わったのが分かった。
あたしは優太の隣に立って白い息を吐く。
……優太にとって、“凪”のイメージはどんな感じなんだろう。
『常に意識してるのか無意識なのか、どっちにしてもたやすく剥がせそうにないな。いい子ちゃんの仮面?』
早坂先生の言葉を思い出して、そんな風に思う。
自分をいい子だと思うかと問われたら、あたしは肯定も否定もしない。
はっきりしないからタチ悪いんだろうけど、自分の性格が便利だと思う時なんて山ほどあった。
その場、その場に合わせて態度も言葉も性格さえも変えてみせるあたしは、まるでカメレオンみたい。
「……寒いね」
「あー……まぁ、12月も終わるしな」
優太のぎこちない返答を聞きながら、両手に息を吐き出した。
「1年って早いよね……優太は冬休み、なんか予定あんの?」
お互いコンビニを背にして、目を合わせずに前を向いたまま。
風は吹いていないはずなのに、冷たい外気がキシキシと鳴っているような気がした。



