「ご機嫌ななめみたいだね、祠稀」
教室で見せた笑顔となんら変わりない、張り付いた笑顔で近づいてくる枢稀。
俺は視線を逸らし、枢稀の横を通り過ぎようとしたのに、それは叶わない。
「また、夜に出歩いてるらしいね?」
その言葉は足を止めるには充分で、話したくないという気持ちを消すには効果覿面だった。
俺は止めた足を枢稀に向け、睨む。
「は?」
「またそんな顔して。どうなっても知らないよ?」
「黙れ犬が」
テメェこそ、明日の我が身でも按じてろ。
呆れたように鼻で笑う枢稀を、思い切り殴ったらどうなる?
こんな奴、殴る価値もねぇけど。
「また、昔みたいにされたいの?」
ドクンと、ひと際大きく鼓動が波打ったのは、昔を忘れていないという事実のよう。



