「諦めたく、ないんです……っ自分のことも周りのことも、いろんなこと、頑張りたくて。欲張りかもしれないけど……」
涙を拭いながら、めちゃくちゃな言葉を必死に紡ぐ。
「だから、だからっていうか……嬉しいです。志帆先輩と……話せて」
やっぱりうまく言えない。伝えたいことの半分も、きっと言葉にできてない。
……変な話だよね。
あたしは、言葉で人は殺せると思ってた。言葉なんて無意味で、口にしたって伝わらないものだと思ってたのに。
いつから、こんなにも伝えることが大事だと思うようになってたんだろう。
「……バカじゃないの」
そう言った志帆先輩がどんな表情をしたのか、視界が滲んでよく見えない。だけどとても弱々しく掠れていた声だったから、想像だけはできた。
「……バカで、いいです」
志帆先輩にされたことを忘れたわけじゃない。仕方なくない。許されるわけじゃない。けど、あたしはそれでもいいとあの日確かに思った。
傷付けられても、傷付けてしまっても。恨んで、妬まれてしまっても。負けたくないし、諦めたくないって。
この世界で生きていかなければならないと、生きていこうと、決めたの。
「これがあたしだから……バカだと言われてもいいんです」
泣いてばかりいられない。傷付いてばかりいられないから。1歩ずつでいいから進んで、前を向いて、自分が信じる道を歩んで行く。
それがあたしの強さだと、今なら言える。
「……志帆先輩」
最後の涙を拭って、ゆっくり頬を緩めた。
「今度、気になる人との話、聞かせてくださいね」
自分と相手の過去を忘れるのではなく、そっと胸に留める。
そしたらきっと、あたしも志帆先輩も同じ間違いはしないはずだから。
「……進展があったらね」
「はい、ぜひっ」
過去が変えられないのならば、今を。変化を望むのならば、今この瞬間からもう一度始めよう。
そう思えば何度だって、人は生まれ変われる気がした。



