僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「このクラスの、日向 祠稀のお兄さんでもある」


両ポケットに手を突っ込んで、ダルさ全開で椅子に座る俺は、一斉にクラスメイトの視線を受ける。


「え? マジで?」

「祠稀って頭よかったっけ?」


サッカー部繋がりの奴が言うと、枢稀が早々と口を開いた。


「祠稀はめんどくさがりなだけで、本当は頭いいんですよ」

「げーっ! マジかよ祠稀!!」


んなわけねぇじゃん。できるか、勉強なんて。


「……こんな場でなんだけど、元気だった? 祠稀」


――ああ。その張り付いた笑顔の仮面、皮膚ごと剥がしてやりてぇ。


「アンタは相変わらず、犬みてぇだな」


口の端を上げ、そのまま視線を逸らした。


「何それーっ」と分かっていないクラスメイトは笑っていた。


枢稀の笑顔が一瞬、引き攣ったのを俺は見逃さなかった。


ざまあねぇ。
親父の言い成り。親父の手下。親父の駒。


お前を相手にして、俺が負けるなんて思ってんじゃねぇよ。



その後いっさい目を合わせることも会話をすることもなく、枢稀は教室を出ていく時、俺のほうを見た。


昔のように、行き場のない憎しみと、怒りを込めた瞳で。