僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「ずっと彼女も……いないと思ってた、から……ビックリしたけど、サヤが幸せなら、嬉しいよ」

「……凪」

「ずっと、思ってた。サヤが彼女作らないの……あたしが、邪魔だからだって」

「っそんなこと思ったことないよ!!」


バカなサヤ。嘘でも邪魔だったと言ってくれれば、まだマシだったのに。


なんでサヤが涙目なのか分からない。あたしの頬を滑る水が、本当に嬉し涙だと思ってる?


幸せな人。


社長で人望も厚くていつも人に囲まれて、将来を共に考える恋人がいて、娘に祝福されて。もう他に欲しいモノも、これ以上の幸せもないでしょ?


――そのまま一生、幸せでいてよ。


あたしがふたりの間に入れないように。


サヤの幸せを願える娘で在り続けられるように。



「今までありがとう。幸せに、なってね」


迷惑をかけたくないと言いながら、あたしはきっとたくさんかけた。恩返しがしたいと言いながら、あたしは何も返せてない。


今のあたしが親不孝のバカ娘だと言われるなら、これが最初で最後の恩返し。


「凪も一緒だよ……俺たちだけの話じゃないんだから」

「……うん、そうだね」


涙を拭って、鼻を啜る。いい子の凪を完成させるのには、もうひと押し必要だったから。


「緑夏ちゃん」


突然声をかけたあたしに、緑夏ちゃんは大袈裟に思えるほど肩を跳ねさせる。そこでおかしそうに笑ってから、自らの小首を傾げた。


「サヤを、幸せにしてくれる?」

「も、もちろんです! 凪ちゃんも、一緒に……私なんかでよければ……」


滲んだ涙をグッと堪え、あらゆる感情をこの時だけは押さえ込んで、あたしは頭を下げた。



「サヤを、よろしくお願いします」



まるで娘を嫁にやる父親の台詞。それでも、あたしはサヤに引き取られて育ててもらった身だ。


サヤは全てを捨てて、自分の幸せよりもあたしのために生きてくれたのだから。


「凪ちゃん……顔上げて、そんな……」


――幸せだった。

充分、幸せだった。


だったら今度は、あたしがサヤの幸せを祈る番でしょう?