僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「凪。俺はこの先、緑夏ちゃんと凪と暮らしていきたいと思ってる」


――未来が、壊れた音がした。


たかが順番で。あたしより先に緑夏ちゃんの名前が出ただけで。


緑夏ちゃんはこれから先“妻”になって、あたしは永遠に“娘”の位置だと言われた気がした。


「凪は、どう思う?」


見たくない。

喋らない緑夏ちゃんが、あたしにまで伝わるほど緊張している姿も。


サヤが申しわけなさそうな顔をしてるくせに、絶対に引かない強い瞳を向けてくるのも、見るに堪えない。


「……凪……」


ぼろっと落ちた涙は、拭うことも隠すこともごまかすことも手遅れで。息を吸った瞬間、吐き出すことが困難になった。


後から後から視界には涙が浮かんで、落ちて。そのたびサヤの顔が見え隠れする。


「な、」
「ッサヤ!」


よかった。緑夏ちゃんが、サヤがあたしに伸ばした手を止めてくれて。


今、サヤがあたしに触ろうものなら何をするか分からない。


罵声を浴びせるかもしれないし、泣き喚いて想いを告げてしまうかもしれない。


――壊れない。このふたりは何があっても。


そう漠然と、でも確実に思わせた。


俯いて歯を食い縛って、目を閉じて、膝の上で握っていた拳をさらに強く握る。


いろんな、たくさんのサヤとの思い出が浮かぶのに、思い出は過去でしかない。


止まらない時間はあたしとサヤを引き離して、サヤと緑夏ちゃんを結ぶ。強く、強く、もうどうしようもないほどに。



「おめでとう」


涙を瞳いっぱいに溜めて、できる限りの笑顔で言った。


「よかった……お母さんが死んでから……サヤ、あたしと仕事ばっかり……で」


嫌だ。なんでこんなこと言わなきゃいけないの。