裏切られた。
それとも最初から、あたしだけがそう思ってたの? 信じたあたしがバカだったの?
ならば3歳のあたしを引き取った19歳のあなたは、どんな覚悟を持っていたというの。
―――ガンッ!
机から抜かれた引き出しは、あたしの手によってゴミ箱へと叩き付けられる。大きさの比率が合ってないせいで、数枚の手紙と共に引き出しは床に落ちた。
その後すぐにゴミ箱も倒れた音がしたけれど、見向きもせず部屋を出る。
信じたあたしがバカだというなら、あたしはもう、最初から全て嘘でいい。
上っ面だけの関係を。いい子の仮面を。一寸の隙間もなく築いて被ってみせる。
「あ、凪。今すごい音したけど……」
「机の椅子倒しちゃっただけ」
キッチンを覗くと、サヤがココアの入ったグラスを渡してくる。それを受け取ってすぐ、緑夏ちゃんもリビングへ戻ってきた。
「あ、ココア飲んでからだね。お風呂すぐ入れるよ」
ふふっと笑って、緩くパーマがあてられた髪を耳にかける緑夏ちゃん。
薄いメイク。かわいい顔に小さい背。緑夏ちゃんの至る所があたしとは真逆で、胸糞悪い。
ココアを一気に胃に流し込んで、ガンッ!とわざと大きな音を立ててグラスを置いた。
「お風呂入ってくるね」
音に驚いたふたりに笑顔を見せ、風呂場へ向かう。
いろんなものを綺麗さっぱり洗い流して、ドス黒い汚い感情だけを残した。
持てる全てを使って、あたしはサヤを取り返してみせる。
――そう、決めた。
ひとりでだってできると思ったから。サヤの口から、はたまた緑夏ちゃんの口から、付き合ってるんだと言われる前に掻き乱して、ヒビを入れて、そこから徐々に壊してしまおうと。
学校で久美たちと笑いあって、早坂先生ともそれなりに会って。ふたりがあたしを欺いたように、あたしもふたりを欺いてやろうとした。
だけどそんなものは、なんの効果もなかった。
全てあたしの悪あがきで、ふたりに亀裂など1ミリも入らなかったし、逆にあたしが入り込む隙間など1ミリもなかった。



