僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「早坂の家はゆっくりできた?」

「うん、それなりに」

「顔色もいいみたいだし……よかったですね社長」

「そんな人を病人みたいに言わないでよ」

「そんな! でも本当に元気そうでよかった。私も社長も心配してたんだよ」


嘘つけよ。


そう内心では毒づくのになんで笑ってるんだろう、あたし。


これじゃあ何も変わってないじゃん。


何、この家族ごっこ。


あたしがあんなものを見たとも知らず、サヤも緑夏ちゃんも変わらない。あくまで社長と社員を貫き通すのか。


―――馬鹿にしてる。


何か言ってくれるかと思ってた。付き合ってるんだとか、何かあたしに言うことがあるだろうに、ふたりは隠して、自分たちだけ楽しむつもりか。


ふざけんな。別れてしまえ。


「夕飯は? 食べてきた?」

「あー…うん、ごめん」

「じゃあ明日の朝一緒に食べようね」


3人で仲良く食卓を囲んで?


吹き出しそうなのを我慢して、あたしは緑夏ちゃんに微笑んだ。


「お風呂沸かしてくるねっ」


すっかり主婦みたいな緑夏ちゃんに、その後ろ姿を嬉しげに見つめるサヤ。


甘ったるい空気。何これ。今まで気付かなかったあたしが、どうかしてた。


「なーぎ、ココア飲む?」


腰を折って、あたしの顔を覗くサヤの顔は溶けそうなくらい笑顔だ。


今までなら、あたしだけに向けられた笑顔だと思えたのに。サヤの心にいる人が、そうさせるんだ。


「アイスココアがいい」

「了解。その間に部屋に荷物置いといで」


ぽんぽんとあたしの頭を撫でるサヤの手。胸が締め付けられて、それ以上に張り裂けそうなほど痛んだ。


「……ねぇ、彗から手紙きた?」

「……、ううん」

「そっか」


眉を下げるサヤにそれだけ言うと、床に落ちたままの鞄を拾ってリビングを出た。