僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



次の日の夜、早坂先生に送ってもらい、あたしはエレベーターの中で壁に身を預けていた。


『そーすけサン、今日は自宅で仕事だって』


そう早坂先生が言っていたことを思い出す。


いくら考えないようにしたって、1週間ぶりの我が家は緊張してしまう。実際あの日から一度も顔を合わせていないのだから。


密室が息苦しい。11階に着いたこと確認して、早々と通路に出る。


最奥の家に向かう途中で、例の警報機が目に入った。そういえば鳴った後どうなったんだろう。


故意的に破壊されていたのだから、いくらなんでも誤作動では済まないはずだ。別にどうでもいいことだけど。


そんなことを考えていたら、家の前に着いてしまった。


「……」


今頃きっとリビングで、ふたりは仲良く会話でもしてそうだな。邪魔なあたしが帰宅して、ふたりはどう反応するのか見ものだ。


歪んで捻れた思考を中断させ、何も考えずに玄関に踏み込んだ。


勢いが衰えないようリビングへ向かうけど、自分の足音がやけに大きく聞こえて、ふたりの声は聞こえない。


あと3歩。2歩、1歩――…。


「凪ーー!! お帰りっ!」


拍子抜けするほど、底抜けに明るい声。その僅かな隙に、気付けばあたしは腕の中だった。


「寂しかったぁぁあ!」


ドサッとあたしの手から鞄が落ちても、ぎゅうぎゅうと抱き締めてくる力に。


「しゃ、社長! そんなにしたら凪ちゃん苦しいですよ!」


苦しんでなどいないのに、まるでその力を知ってるかのような言い方に。


「ごめん凪! ついっ!」

「お帰りなさい、凪ちゃん」


愛しさと憎しみが、混じる。


「ただいま」


――そう笑った後に、死にたくなった。


『常に意識してるのか無意識なのか、どっちにしてもたやすく剥がせそうにないな。いい子ちゃんの仮面?』


けっきょくあたしは、そういう人間なんだということが分かってしまったから。