「薬効かなかったのか?」
ココアをテーブルに置いた早坂先生にお礼を言って、ソファーから起き上がる。
「効いたよ。3時間くらいで起きちゃったけど」
眠れなくなったあたしは早坂先生に病院へ連れていかれて、睡眠誘発剤を処方してもらった。
効くは効くけれど、ダルさがどうしても出てしまう。
「つーか、ベッドで寝ろよ。ソファーが悪いかもしれねぇだろ」
「……これ、ソファーベッドだって言ってたじゃん」
「そうだけど」と、早坂先生は言葉を濁して珈琲を口に運ぶ。
「つうか、そろそろ学校には行けよ。俺だって夕方まで仕事してんだから」
「……んー」
やっぱり、あたしの話を信じてる線で間違いないかも。
学校に行けばひとりではないし、そのままここに帰ってくれば寂しい思いはしなくて済むと言いたいんだろう。
それであたしの心が静まるなら、とっくに行ってるけど。
「分かった。月曜から行く」
「家には?」
「……帰ってほしいなら帰る」
「帰りたくないならいいけど、顔ぐらい出せば? 凪の家はここじゃないぞ」
最後のひと言が余計だ。
いつまでもここにいられるわけじゃないことくらい分かってるし、あたしがいない間にふたりの仲がさらに深まることだって分かってる。
だけどそれら全部を隅に追いやって、あたしが今いちばん求めてるのは彗だった。
自分でもどうしてこんなに彗に固執するのか不思議だけれど、あたしにとって彗は完全無二の存在で最強の味方。
3年以上続けた文通が、それを証明してる。
頭のいい彗ならどうすればいいか教えてくれる。答えまで導いてくれる。
今は、何か事情があって返事が出せないだけ。でも今度は、必ず返事を書いてくれる。出せずにはいられないに決まってる。
大丈夫。
彗は必ず、返事をくれる――…。



