―――――…
「もう1週間だぞ」
ソファーに寝転がるあたしのそばに、眠そうな顔をした早坂先生が現れる。
おはようの挨拶より先に、学校にも行かずダラダラと過ごすあたしに、説教でもしようって感じだ。
「彗から手紙来てた?」
天井に向けて、包帯が取れた右手をかざす。
視界の隅で早坂先生が呆れたような顔をしたのが見えたけど、気にならなかった。
「来てないってよ」
それだけ言ってキッチンへ向かう早坂先生に、あたしは何も話してない。
あの日見たことも、あたしの想いも言わず、ただ家に帰りたくないの一点張り。
でも3泊目からそう簡単には許されなかった。
月曜の夜になっても帰らないあたしをサヤが心配し始めて、あたしが眠れていないことに早坂先生が気付いたから。
『理由も話さない奴を家に置きたくない』
子供相手にひどいと思ったけど、ごもっともな意見だとも思った。
だから仕方なく、涙を流してみた。
家に向かう途中で、誰もいないことを思ったら足取りが重くなって、息も苦しくなって、他の家から聞こえる笑い声に耳を塞ぎたくなって、気付けば――…。
なんて、泣きながら言葉を詰まらせて。とても寂しがりで、弱い子を演じてみせた。
信じたか信じてないかは知らないけど、早坂先生は初めてあたしの本音を聞いたことになる。
あたしの話が嘘か真かなんて、二の次。
初めて見せた弱さは、カウンセラーの早坂先生にとって“収穫”なのだから。
その後早坂先生はすぐに、暫く預かるとサヤに電話していた。心を開き始めただとか、寝付きの悪さも改善できるだろうとか、そんなことも言ってた気がする。
元々あたしに頼れる人ができればと思っていたサヤは、渋々だけど許してくれた。
自分が惨めに思えたのもまた、事実だった。



