「……は?」
玄関に仲良く並ぶ靴を見て漏れた声は、疑心と微かな不安。
早坂先生の家に泊まるはずだったあたしが家に戻ってきたのは、替えの下着を忘れたからだった。
夜10時過ぎ。玄関のドアを開けたままの状態で突っ立って、靴を見下ろす。
数日前のように今日もまた、ふたりがそろって家に帰っているなんて。
「……」
ドロッ、と。確かに知っている感情が胸の中に溢れる。だけどきっと、多すぎた。
麻痺した感情に気付かぬまま、音も息すら潜めてドアを閉める。無意識に忍ぶ脚は、暗い廊下を照らす淡い光に動きを止めた。
――サヤの寝室。
廊下に対して押し開けるタイプのドアは、半分も閉まっていない。その隙間とも言い難い空間から漏れる蒼い光と、微かな話声。
「……」
これ以上進むのを拒むように目の前に立ちはだかるドアを前に、動けずにいる。そんなあたしにサヤも緑夏ちゃんも気付かない。
あたしの姿が見えないのもあるだろうけど、それ以上にスプリングするベッドの上で溺れているからだ。
壁とドアを繋ぐ金具に視線を移せば、自然と2センチ程の隙間から寝室の様子が窺えた。
きっとコンクリートに頭を叩きつけられるよりも、もっと強い衝撃を受けた。
心臓をナイフで一突きされるよりも、めった刺しにされるよりも。
あたしの四肢全てが握り潰されて引き千切られて、体すら跡形もなく切り刻まれたとしても足りない。
――男と女が、そこに在った。
別空間、別次元、異世界。13歳のあたしにとってそれは強烈で、不快にすら思った。だけどそんなものはすぐに彼方へ消えて、代わりに激情に駆られる。
「……ん、あっ……!」
……ねぇ。
「あ、んっ!」
あたしがいない間に裸で抱き合って息乱してベッド軋ませて鼻にかかった声上げて汚い粘着音出して。
「……っサヤッ……!」
何
を
し
て
る
の
?



