僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「早坂先生がどんな人か、サヤのほうがあたしより知ってるじゃん。それでもダメって言うなら……諦めるけど」


やっぱりあたしって演技派なのかも。


サヤの戸惑っていた顔が、みるみる申しわけなさそうになっていく。


「や……うん……ダメじゃないよ。ダメじゃないし、早坂は捻くれてるけど基本いい奴だし……」


葛藤してる。次にくる言葉もきっと、予想通りだと思う。


「でも凪はいい子で美人だからさぁぁああ! 心配なんだよー!」

「サヤに伝授されたチカン撃退法使うから平気だよ」

「ああ、アレね……凪に手なんか出したら、地獄見るだけなのにね」


一度も役に立ったことはないけどね。

そう思ったけど言わずに、今週の土曜に泊まりに行くとだけサヤに伝えた。


「ねぇ凪、早坂のことは好き?」


リビングを出ようとしたあたしの背中に、今度はサヤが問いかける。


まるであたしが、他に好きな人はいないような訊き方。


「好きだよ? サヤと、友達と同じくらい」


笑顔で振り向き、サヤの言葉を待たずにリビングを出た。


……サヤは間違ってない。


あたしがひとりで抱え込んで悩むのは、それを打ち明けられる人が周りにいないと分かってる。


あたしにとって、仲良くするのと信用するのは別だ。


仲がいいと思える友達はいくらでもいるけど、信用してなんでも話せる友達なんていくらもいない。今のあたしにとっては皆無だ。


サヤはそういう存在を、あたしに持って欲しかったんだと思う。彗はそばにいないから、だから早坂先生を紹介してきた。


早坂先生は好きだし、サヤが望むことは叶えてあげたい。


早坂先生といれば寂しくないし、それでサヤも安心するなら一石二鳥。


……なんて、自分の行動理由を細分化している自分が馬鹿らしい。


今のあたしの行動原理は、家にいたくない。たったそれだけのはずだ。


「……頭イタ……」


家にいたくない。自分のために、サヤのために。そう思っていたのに、自分で自分の首を絞めていたなんて。


それに気付いた瞬間は、本当に突然だった。