「それで? 凪ちゃんは何に悩んでるのかなー」
ものすごく棒読みで適当。
親身になって聞いてくれるとは到底思えない。でもそれが、この人のやり方なんだろう。
例えば、本当に真剣に悩みがある?と訊かれたら、あたしは俯いて返事を出し渋るか、笑ってごまかす。
でもこの人は、発言がいちいち癇に障って何か言い返せずにはいられない。それが本音でも、虚言だとしても。
「俺を観察しなくていいよ」
「……早坂先生って、モテるけどフラレるタイプでしょ」
「あたしのことなんか好きじゃないんでしょ、バチーン! みたいな? 当たりー」
「でもちゃんと好きなんでしょ?」
返ってきたのは言葉ではなく、肯定の微笑みだった。
相手には意地悪くて、自分には素直じゃない。
……サヤが、きっと気に入ると言った意味が分かった。
多分だけど、どこかあたしと似てる。はっきり言えるのは、早坂先生はサヤと真逆。
こういうタイプの人には、あたしは限りなく素に近い自分を出せる。そしてカウンセラーで年上というオプション付き。
「……パパに、なんて言われたの?」
「超美人で自慢の娘を見せびらかしたい」
冷ややかな視線を送ると、早坂先生は悪戯が失敗した子供みたいに舌を出した。
そのままバルコニーで電話するサヤを見つめ、語るように口を開く。
「かわいい1人娘が何かに悩んでいて、眠れてないだろうに無理して笑ってる。たまに弱ったところを見せてくれるけど、理由は話してくれない。
本当はとても寂しがりで、そうさせてしまったのは自分なのに、何もできなくて悔しくい。どうにかしてあげたいけど凪は絶対自分に頼らないから、話し相手にでもなってくれないか……って」
リビングが静けさに包まれたのは、なにも早坂先生が話し終わったからじゃない。
あたしが、両手で顔を覆ったから。
「……そーすけサンって、どんな存在なわけよ。凪ちゃんの中で」
「……」
サヤの後輩で今も連絡が取り合える仲だというんだから、あたしが本当の娘じゃないことぐらい知ってるんだろうな。



