僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「んぐっ!」


お土産のケーキを食べていると、サヤがフォークを口に入れたまま変な声を出す。何事かと見ると、サヤは胸ポケットから携帯を取り出した。


「ごめん、電話きちゃった」


……仕事の電話か。


バルコニーへと向かったサヤは普段であれば土曜だって仕事だし、日曜だって会社か家に籠る。


今日はあたしのために休んだんだろうけど、仕事の電話を無視するわけにはいかないんだ。


「……」


柔らかいケーキをフォークで弄んでいると、斜め前からくすっと微かな笑い声が聞こえる。顔を上げると、早坂さんが口に手を当てていた。


「……どうしたんですか?」

「いや? 拗ねてるなーと思って」

「っ別に拗ねてません!」


しまった。

そう焦ったのは、他人から見ても分かるくらい感情を剥き出しにすることなんて、めったにないから。


ごまかすように崩れたケーキを食べると、早坂さんは容赦なく視線を注いでくる。


……ていうか、早坂さんって……何?


ケーキを食べ終わり、ぬるくなった珈琲で口直し。


盗み見るように早坂さんを窺うと、まだ遠慮なしにあたしを見つめていた。


「……モテるだろ」


つい「は?」と言ってしまい、早坂さんはもう一度同じことを言う。


「大人っぽいとか言われるだろ。それか、同年代の奴らをガキだと思ってる」


テーブルに肘を乗せ、絡めた指の上に顎を乗せる早坂さんは、まるであたしの心を見透かすみたいに微笑む。


「……友達は多いですよ、学年問わず男女共に」


当たり障りなく答えたはずなのに、早坂さんは「それだ」と意味の分からないことを言った。


「常に意識してるのか無意識なのか、どっちにしてもたやすく剥がせそうにないな。いい子ちゃんの仮面?」


カッと顔に熱が集まるのが分かる。羞恥心と憤懣がせめぎ合い、どちらにしても返す言葉が見つからない。