しゃがみ込んで大きい破片を拾い上げると、足音とドアの開く音。
「凪! 素手で触っちゃダメだよっ」
顔を上げる前に聞こえたサヤの声は、少し掠れていた。
「おいで。破片踏まないようにね」
起こしちゃってごめん。と言えなかったのは、差し出されたサヤの手があたしの胸を熱くするほど、温かかったから。
「派手に割ったねぇ……怪我しなかっ、」
引き寄せられたままサヤの胸に飛び込むと、心配そうな声が痛みを押し退けて頭の天辺まで届く。
「……凪?」
返事の代わりにぎゅっと抱き付くと、サヤは柔らかくあたしの背中に手を添えてくれた。
そのまま髪を指で絡め取るみたいに、頭を撫でてくれる。
「凪、顔見せて」
首を左右に振ると、サヤの衣服に鼻先が擦れた。
「……こんな時間に起きて……眠れなかった?」
「……」
「そう……。じゃあ、もっかいベッドに入ろう。大丈夫、眠れるよ」
ふわりと揺れる空気は、サヤがあたしを抱き締めてくれた証拠。
耳元で囁くサヤの声には、温もりも優しさも心配も愛しさも全部全部含まれている。
サヤはあたしが欲しいもの全部、惜しげもなく与えてくれる。
「ちょっと待ってね。グラス片付けなきゃ、危ない……んだけどまぁ、後でいっか」
離れたくないと言わんばかりに強く抱き付くと、サヤは困ったような笑いを零す。
後頭部をグシャグシャと撫でられて、次の瞬間には抱き上げられていた。
サヤの流れるような動作はあたしも同じで、腰に回していた腕は気付けばサヤの首に回っている。



