僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ



「忘れてた! 緑夏ちゃん!!」

「はい!?」


ソファーに沈むようにしていた体を起こすと、あたしの大声に緑夏ちゃんが玉ねぎを持ったまま目を丸くさせる。


「ごめん、あたし今日お泊まり会なんだ」

「えっ!?」


玉葱が落ちた音がして、あたしは顔の前で手を合わせた。肘が肩と同じくらいの高さまできてるのはこの際無視する。


「ごめん! 久美たちと約束してて……だから夕飯いらないし、明日の夕方まで帰ってこないんだ!」


すっかり忘れていた。優太の両親が意外にも気さくで、一緒に夕飯を食べようという話になったことを。


遅くまで一緒にいるかもって久美に話したら、じゃあそのあとみんなで集まって、久美の家に泊まろうって話になったこと。


「ごめんね。夕飯の材料買ってきてくれたのに」


申しわけなさから眉を下げると、「ううん!」と言う声と色んな物が落ちた音がする。


「だ、大丈夫?」

「うん! ははっ、外暑かったから、急に冷えて水滴が……滑って大変」


どちらかというと緑夏ちゃんのほうが暑そうだけど、とりあえずあたしは準備をしなきゃいけない。


ソファーから腰を上げると、落としたものを拾っていた緑夏ちゃんが顔を見せた。


「あの……社長には言った?」

「や、まだ。あとで連絡しとくよ」


変な誤解されそうだけど、一応言っておかなきゃ。


携帯を開きながらキッチンの横を通り過ぎるあたしは、「そっか……」という緑夏ちゃんの声を聞き流してしまった。


リビングを出てから、今何か言ってたかなと思う程度だったのに、やけに耳に残った声音だった。